Home » 論文 (Page 2)

Category Archives: 論文

論文掲載:室温強磁性半導体によるスピン注入の初実証

室温強磁性半導体によるスピン注入の初実証に関する研究成果はScientific Reports誌に掲載されました。本研究は東京大学との共同研究の成果です。

Shobhit Goel, Nguyen Huynh Duy Khang, Yuki Osada, Le Duc Anh, Pham Nam Hai & Masaaki Tanaka, “Room-temperature spin injection from a ferromagnetic semiconductor”, Scientific Reports, 13, 2181 (2023).

室温強磁性半導体の実現は固体物性と材料科学において、長年の夢の一つです。たとえば、2005年のScience誌に“Is it possible to create magnetic semiconductors that work at room temperature?”は125重要課題の一つとして掲載されています(125 big questions that face scientific inquiry over the next quarter-century. Commemorative issue celebrating the 125th anniversary of the science magazine)。しかし、今迄に研究された強磁性半導体、たとえばGaMnAsは室温よりキュリー温度が低く、室温動作が極めて困難でした。一方、我々はFe系強磁性半導体を提案し、2012年に世界初のn型強磁性半導体InFeAs, 2014年にp型室温強磁性半導体GaFeSb、さらに2018年にn型室温強磁性半導体InFeSbを実現してきました。しかし、以前にも、室温強磁性半導体を主張した研究も多くあり、その起源が未解明なものがほとんどであり、本当に真性な室温強磁性半導体が出来たのか、それとも半導体中の単なる磁性偏析の粒子だけなのか、議論が多くありました。一時期には、強磁性半導体の研究に対する不信感から、UMO (Unidentified Magnetic Object)と批判されてきました。ちなみに、高温超伝導でもUSO (Unidentified Superconducting Object)という言葉もあり、先日にNature誌に掲載された室温超電導の論文が取り下げられたばかりです。強磁性半導体においても、本当に室温強磁性ができたかどうか、単に磁性の評価だけでなく、他面的に証明する必要がありました。

今回に我々は室温強磁性半導体GaFeSbを用いて、重要な機能の一つ「スピン注入機能」をスピンポンピング法およびトポロジカル絶縁体BiSbの巨大な逆スピンホール効果を用いて実現しました(図1)。これにより、我々が開発に成功した強磁性半導体はちゃんと室温でスピン注入源として動作できることを示し、真性な室温強磁性半導体であることを示しました。

図1.BiSbトポロジカル絶縁体/GaFeSb強磁性半導体におけるスピンポンプピングによるスピン注入および逆スピンホール効果による起電力の発生。

論文掲載:超高密度磁気記録4 Tbit/in2に向けた新しい磁気センサー技術

超高密度磁気記録4 Tbit/in2に向けた新しい磁気センサー技術「SOTセンサー」に関する研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。本研究はスト―レージ大手メーカのWestern Digitals社との共同研究の成果です。

Ho Hoang Huy, Julian Sasaki, Nguyen Huynh Duy Khang, Shota Namba, Pham Nam Hai, Quang Le, Brian York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Michael Gribelyuk, Xiaoyu Xu, Son Le, Michael Ho, and Hisashi Takano, “Large inverse spin Hall effect in BiSb topological insulator for 4 Tb/in2 magnetic recording technology”, Appl. Phys. Lett. 122, 052401 (2023).

従来のTMR効果を用いたTMRセンサーは限界に向かいつつあります。これは、TMRセンサーには、固定層を含み、最低でも2の磁性層が必要なため、20 nm以下の微細なデバイスの作製が困難な他、熱雑音やスピン移行トルク雑音が増大するためです。そこで、逆スピンホール効果を用いるSOTセンサー(図1)を用いれば、TMRセンサーの問題点を解決できます。しかし、SOTセンサーを実現するためには、高いスピンホール効果を有する材料が必要です。従来の重金属を用いると、SOTセンサーの高いSNR比を実現できません。そこで、Pham研究室で開発したBiSbトポロジカル絶縁体を用いれば、高いSNR比を実現できることを理論的に示し、かつその実証を行いました。本研究成果により、超高密度磁気記録4 Tbit/in2の実現が大きく前進します。

図1:SOTセンサーの構造

論文掲載:300℃で低温成長したYPtBiの巨大なスピンホール効果を実現

Si Back-end-of-line (BEOL)プロセスに適応すべく300℃で低温成長したYPtBiの巨大なスピンホール効果を実現した研究成果はAIP Advances 誌(オープンアクセス)に掲載されました。

Takanori Shirokura and Pham Nam Hai, “Giant spin Hall effect in half-Heusler alloy topological semimetal YPtBi grown at low temperature”, AIP Advances 12, 125116 (2022).

YPtBiはトポロジカルハーフホイスラ合金で、高いスピンホール効果と高い熱耐久性を両立できる物質であり、スピン軌道トルクスピンデバイスのスピン流源として有望です。しかし、YPtBiはゼロギャップ半導体のため、バルクのキャリアを抑制するために、600℃の高温で製膜する必要がありました。今回の研究では、半導体Si回路のBEOLプロセスに適応できる温厚な温度300℃でもYPtBiを製膜できる条件を見だして、巨大なスピンホール効果を実現しました。

なお、本研究はキオクシア社から支援を得て行った研究です。

論文掲載:NiO挿入によるBiSbトポロジカル絶縁体のスピンホール性能の向上

NiO挿入によるBiSbトポロジル絶縁体のスピンホール性能の向上に関する研究成果はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。本研究はサムスン日本研究所との共同研究の成果です。

Julian Sasaki, Shota Namba, Shigeki Takahashi, Yoshiyuki Hirayama, and Pham Nam Hai,  “Highly efficient spin current source using BiSb topological insulator / NiO bilayers”, Jpn. J. Appl. Phys. 62, SC1005 (2023).

本研究では、下部層としてのBiSbとCo磁性薄膜の間にNiOを挿入すると、BiSbからCoへのSb拡散を抑制し、BiSbの有効なスピンホール角が大幅に改善すること、また、Coが垂直磁気異方性を示すことを見だしました。本成果はBiSbトポロジカル絶縁体をSOT-MRAMへの集積する際に、重要な技術である。

論文掲載:次世代HDD用磁気センサーに向けた新技術

次世代HDD用磁気センサーに向けた新技術「SOT磁気センサー」を実現するためのBiSbトポロジカル絶縁体/面内磁化膜における巨大なスピンホール効果に関する研究成果はIEEE Transactions on Magneticsに早期アクセスとして掲載されました。本成果はHDD大手メーカーのWestern Digital Inc.社との共同研究の成果です。

H. H. Huy, J. Sasaki, N. H. D. Khang, S. Namba, P. N. Hai, Q. Le, B. York, C. Hwang, X. Liu, M. Gribelyuk, X. Xu, S. Le, R. Nagabhirava, M. Ho and H. Takano, “Large spin Hall angle in sputtered BiSb topological insulator on top of various ferromagnets with in-plane magnetization for SOT reader application”, IEEE Trans. Magn. 59, 3000904/1-4 (2023)

論文掲載:MoS2における磁気抵抗効果

MoS2における磁気抵抗効果の研究成果がScientific Reports誌に掲載されました。本論文は若林研究室の宗田伊理也氏との共同研究の成果です。

Iriya Muneta, Takanori Shirokura, Pham Nam Hai, Kuniyuki Kakushima, Kazuo Tsutsui, and Hitoshi Wakabayashi, “Ferromagnetism modulation by ultralow current in a two-dimensional polycrystalline molybdenum disulphide atomic layered structure”, Scientific Reports 12, 17199 (2022).

論文掲載: 光電子分光によるMnGa磁性体のバンド構造の観測

MnGa磁性体のバンド構造を光電子分光法を用いて観測した研究成果がPhysical Review Materialsに掲載されました。本研究は東大の小林グループとの共同研究です。

M. Kobayashi, N. H. D. Khang, T. Takeda, K. Araki, R. Okano, M. Suzuki, K. Kuroda, K. Yaji, K. Sugawara, S. Souma, K. Nakayama, K. Yamauchi, M. Kitamura, K. Horiba, A. Fujimori, T. Sato, S. Shin, M. Tanaka, and P. N. Hai, “Rhombic Fermi surfaces in a ferromagnetic MnGa thin film with perpendicular magnetic anisotropy”, Phys. Rev. Materials 6, 074403 (2022).

MnGaはスピン軌道相互作用が強い元素を含まないにもかかわらず、非常に強い垂直磁気異方性(~4-5 Tesla)を有する磁性体です。また、他の重金属やトポロジカル絶縁体と界面において、強いDMI相互作用やスキルミオンの発生など、顕著な特性を持っています。今回に、光電子分光法を用いてMnGaのバンド構造を解明しました。その結果、X点において、電子のポケットの存在することを明らかにしました。

論文掲載:トポロジカル半金属YPtBiにおけるスピンホール効果の組成依存性

トポロジカル半金属YPtBiにおけるスピンホール効果の組成依存性を評価した研究成果がJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。本成果はキオクシア株式会社との共同研究による成果です。

Takanori Shirokura , Tsuyoshi Kondo, and Pham Nam Hai, “Effect of stoichiometry on the spin Hall angle of the half-Heusler alloy topological semimetal YPtBi”, Japanese Journal of Applied Physics 61, 073001 (2022).

今回の研究では、YPtBi組成ずれがあっても、スピンホール効果ー伝導率の関係がほとんど変わらないことが分りました。つまり、YPtBiのスピンホール効果は組成ずれに対して、ロバストであることを示しました。

論文掲載:ナノ秒の超高速超低消費電力磁化反転に成功

BiSbトポロジカル絶縁体の巨大スピンホール効果を生かして、ナノ秒台の超高速超低消費電力磁化反転を実証した研究成果がApplied Physics Letters誌のEditor’s pickとして掲載されました。なお、本成果は東工大-NHK放送技術研究所との共同研究によるものです。

Nguyen Huynh Duy Khang, Takanori Shirokura, Tuo Fan, Mao Takahashi, Naoki Nakatani, Daisuke Kato, Yasuyoshi Miyamoto, and Pham Nam Hai, “Nanosecond ultralow power spin orbit torque magnetization switching driven by BiSb topological insulator”,  Appl. Phys. Lett. 120, 152401 (2022)

図(a)超高速磁化反転を実証するための膜構造。(b)作製した素子の写真。(c)-(f) パルス幅 1~4ナノ秒のパルス電流を掃引した時の磁化反転。(g) 3ナノ秒の正負のパルス電流(1.3×107 A/cm2)をBiSbに連続的に印加した時の磁化反転。(h) 1ナノ秒から1ミリ秒まで、様々なパルス電流を印加した時の磁化反転に必要な閾値電流密度。

プレスリリース:トポロジカル絶縁体による磁性体の超高速磁化反転に成功~超高速スピン軌道トルク磁気抵抗メモリの実用化へ加速~

論文掲載:スパッタリング製膜したトポロジカル絶縁体膜でスピンホール角>10を達成

スパッタリング製膜したトポロジカル絶縁体BiSb膜でスピンホール角>10を達成した研究成果がScientific Reports誌に掲載されました。

Tuo Fan, Nguyen Huynh Duy Khang, Soichiro Nakano, Pham Nam Hai, “Ultrahigh efficient spin orbit torque magnetization switching in fully sputtered topological insulator and ferromagnet multilayers”, Scientific Reports 12, 2998 (2022).

今回の研究では、高配向性BiSbを作製することによって、量産工程でよく使われているスパッタリング法で製膜したトポロジカル絶縁体BiSbでも、高スピンホール角~10.7および高電気伝導率~1.5×105 Ohm-1 m-1を達成し、スピン流源としてよく使われている重金属のWよりも300倍少ない消費電力で磁化反転を実証しました(下記の表の一番右のコラム)。

表:様々な材料のスピンホール角、電気伝導率、スピンホール伝導率、および磁化反転の消費電力(規格化)。