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論文掲載・プレスリリース:強磁性半導体の世界最高のキュリー温度を実現

強磁性半導体(Ga,Fe)Sbにおいて、世界最高のキュリー温度(530 K)を実現した研究成果はApplied Physics Letters誌に掲載されました。

Pham Nam Hai, Ken Takabayashi, Kota Ejiri, and Masaaki Tanaka, “Very high Curie temperature (470–530 K) in (Ga,Fe)Sb ferromagnetic semiconductor grown by step-flow mode on vicinal GaAs substrates”, Appl. Phys. Lett. 126, 162407 (2025).

強磁性半導体は半導体と磁性体の両方の特徴を有する材料で、半導体デバイスと磁性デバイスの機能性を融合するスピン機能半導体デバイスの実現に寄与すると期待されています。今までに (Ga,Fe) Sb強磁性半導体において達成できたキュリー温度は最高で420 K (147 ℃)でした。この値は室温より高いものですが、室温でスピン機能の半導体デバイスを安定的に動作させるためには、不十分です。また、添加したFe原子あたりの磁気モーメントが2~3 ボーア磁子程度であり、理想的な値の5ボーア磁子よりも小さいことから、添加したFe原子がすべて活性化しない(磁性へ貢献しない)ことが分かります。従って、室温でスピン機能の半導体デバイスを安定的に動作させるためには、強磁性半導体の高品質化(キュリー温度の増大、ボーア磁子の増大)の手法を開発する必要があると考えました。そこで、本研究では、ステップフロー成長法を用いて、高濃度のFe添加でも、高い結晶性を有する (Ga,Fe) Sb強磁性半導体を作製しました。この方法で作製した (Ga,Fe) Sbのキュリー温度は530 K(257℃)に達成し、従来の方法で作製したものよりも大幅にキュリー温度を上昇させることができました。さらに、室温におけるFe原子あたりの磁気モーメントは、従来よりも2倍大きい4.5ボーア磁子を達成しました。本研究成果は、室温で動作可能な低消費電力スピン機能半導体デバイスの実現に寄与すると考えられます。

図(a)作製したサンプルの断面構造。(b)電子顕微鏡像

プレスリリース:強磁性半導体の世界最高のキュリー温度を実現

Press release: Achieving a Record-High Curie Temperature in Ferromagnetic Semiconductor

論文掲載:トポロジカル半金属YPtBiにおけるPtとBi組成の役割を解明

トポロジカル半金属YPtBiにおけるPtとBi組成の役割を解明した研究成果がJapanese Journal of Applied Physicsに掲載されました。本研究はウェスタンデジタル社との共同研究の成果です。

Sho Kagami, Ohiro Fujie, Daiki Ito, Quang Le, Brian York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Son Le, Maki Maeda, Tuo Fan, Yu Tao, Hisashi Takano and Pham Nam Hai, “Role of Pt and Bi on the giant spin Hall effect in topological semimetal YPtBi”, Jpn. J. Appl. Phys. 64, 053001 (2025).

論文掲載:トポロジカル絶縁体BiSbの(012)高配向およびエピタキシャル膜における熱処理効果とスピンホール効果

トポロジカル絶縁体BiSbの(012)高配向およびエピタキシャル膜における熱処理効果とスピンホール効果に関する研究成果がJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。本研究はウェスタンデジタル社との共同研究成果です。

Quang Le, Brian R. York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Lei Xu, Son Le, Maki Maeda, Tuo Fan, Yu Tao, Hisashi Takano, Min Liu, Zhang Ruixian, Shota Namba and Pham Nam Hai, “Thermal reliability and spin Hall angle of highly textured and epitaxial Bi0.9Sb0.1(012) topological insulator”, Jpn. J. Appl. Phys. 64, 043001 (2025).

論文掲載:トポロジカル絶縁体・磁性体界面のスピンホール効果向上メカニズムの解明

トポロジカル絶縁体・磁性体界面のスピンホール効果向上メカニズムを解明した研究成果がJournal of Applied Physics誌に掲載されました。本研究はウェスタンデジタル社との共同研究の成果です。

Quang Le, Xiaoyong Liu, Lei Xu, Brian R. York, Cherngye Hwang, Son Le, Maki Maeda, Tuo Fan, Yu Tao, Hisashi Takano, Min Liu, Zhang Ruixian, Shota Namba, and Pham Nam Hai, “Effects of metal, oxide, and hybrid metal-oxide interlayers on spin–orbit torque in BiSb topological insulator and magnetic interfaces”, J. Appl. Phys. 137, 123903 (2025)

論文掲載:トポロジカル絶縁体BiSbにおけるドーピング効果

トポロジカル絶縁体BiSbにおけるドーピング効果に関する研究成果はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。本研究はウェスタンデジタル社との共同研究の成果です。

Quang Le, Brian R. York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Michael A. Gribelyuk, Son Le, Lei Xu, Jason James, Jose Ortega, Maki Maeda, Tuo Fan, Hisashi Takano, Min Liu, Zhang Ruixian, Shota Namba and Pham Nam Hai, “Transport and material properties of doped BiSbX topological insulator films grown by physical vapor deposition”, Jpn. J. Appl. Phys. 63 123001 (2024).

本研究では、トポロジカル絶縁体BiSbに様々な元素や分子をドーピングし、その効果を評価しました。ドーピングによって表面やバルクの伝導率、格子定数比a/c、融点、硬度、結晶粒径などを制御できることを示し、将来的にSOTデバイス応用に有利に働くことを示しました。

論文掲載:トポロジカル絶縁体のスピンホール効果を用いた磁気センサー

トポロジカル絶縁体のスピンホール効果を用いた磁気センサーに関する研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。本研究はウェスタンデジタル社との共同研究の成果です。

Min Liu,  Zhang Ruixian, Quang Le, Brian York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Michael Gribelyuk, Xiaoyu Xu, Son Le, Maki Maeda, Tuo Fan, Yu Tao, Hisashi Takano, Pham Nam Hai, “Spin Hall magnetic field sensing device using topological insulator”, Appl. Phys. Lett. 125, 242401 (2024).

本研究では、先行研究の逆スピンホール効果を用いた磁気センサーの研究に続き、スピンホール効果でも同様に磁界センシングできること、トポロジカル絶縁体BiSbの巨大なスピンホール効果による大きな出力電圧が得られたこと、さらに、トポロジカル絶縁体におけるスピンホール効果と逆スピンホール効果の相反関係も確認できました。

論文掲載:3次元磁性細線メモリに向けたALD成膜Ptのスピンホール効果の評価

3次元磁性細線メモリに向けたALD成膜Ptのスピンホール効果の評価に関する下記の研究成果がApplied Physics Letter誌に掲載された。

Ken Ishida, Kota Sato, Pham Nam Hai, “Spin Hall effect in platinum deposited by atomic layer deposition”, Appl. Phys. Lett. 125, 162404 (2024).

3次元の磁性細線メモリを実現するためには、スパッタリング成膜だけでは実現不可能のため、3次元成膜が可能なALD法を用いて、磁性層およびSOT層を成膜する必要がある。今回の研究では、SOT層として期待されているPtをALD法を用いて成膜し、そのスピンホール効果を評価した。

論文掲載:BiSbトポロジカル絶縁体/CoFeB/MgO垂直磁化膜における高スピンホール角と低電流磁化反転の実証

BiSbトポロジカル絶縁体/CoFeB/MgO垂直磁化膜における高スピンホール角と低電流磁化反転の実証に成功した研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。本研究成果は米ウェスタインデジタル社との共同研究の成果です。

Zhang Ruixian, Ho Hoang Huy, Takanori Shirokura, Pham Nam Hai, Quang Le, Brian York, Cherngye Hwang, Xiaoyong Liu, Michael Gribelyuk, Xiaoyu Xu, Son Le, Maki Maeda, Tuo Fan, Yu Tao, and Hisashi Takano, “High spin Hall angle in BiSb topological insulator and perpendicularly magnetized CoFeB/MgO multilayers with metallic interfacial layers”, Appl. Phys. Lett. 124, 072402 (2024).

BiSbトポロジカル絶縁体は巨大なスピンホール角を示す高性能なスピンホール材料です。一方、CoFeB/MgO垂直磁化膜はMRAMの標準的な自由層です。本研究では、SOT-MRAMの実現に向けて、低電流書き込み用のBiSbと高性能読み出し用のCoFeB/MgO垂直磁化膜の間に、適切な中間層を挿入することによって、高スピンホール角と低電流磁化反転の実証に成功しました。

論文掲載:トポロジカル半金属YPtBi/CoPt接合におけるポストアニール効果

トポロジカル半金属YPtBi/CoPt接合におけるポストアニール効果に関する研究成果がJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。

Sho Kagami, Takanori Shirokura, and Pham Nam Hai, “Effects of post-growth annealing in YPtBi topological semimetal and Co/Pt perpendicular magnetization multilayers”, Jpn. J. Appl. Phys. 63, 02SP98 (2024).

本研究では、YPtBi/CoPt接合を高温300℃までポストアニールすると、CoPtの磁気特性およびYPtBiのスピンホール特性が向上したことを明らかにした。また、YPtBi/CoPt接合はW/CoPt接合よりも高い熱耐久性があることも示した。

論文掲載:トポロジカル半金属YPtBiのSiOx/Si基板上への成膜とスピンホール特性評価

トポロジカル半金属YPtBiのSiOx/Si基板上への成膜とスピンホール特性評価に関する研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。

Takanori Shirokura, Nguyen Huynh Duy Khang, Pham Nam Hai, “High-efficient spin orbit torque generated by topological semimetal YPtBi deposited on oxidized Si substrates”, Appl. Phys. Lett. 124, 052402 (2024)

トポロジカル半金属YPtBiは高い熱耐久性と高いスピンホール角を両立できる材料としてSOT-MRAMのスピンホール層として有望である。今回の研究では、実用的な基板であるSiOx/Si基板上への成膜およびスピンホール特性評価を行った。その結果、YPtBiが(110)配向するとともに、スピンホール伝導率がYPtBi(111)よりも高いことを見出した。