論文掲載:強磁性半導体p-n接合における巨大な磁気抵抗効果
強磁性半導体p-n接合における巨大な磁気抵抗効果に関する研究成果がJournal of Applied Physics誌に掲載されました。
本研究では、p-型(Ga,Fe)Sb/n-型(In,Fe)Sb或いはn-型(In,Fe)Asの鉄系強磁性半導体のp-n接合 を作製し、そのスピン依存伝導特性を評価したところ、スピンバルブ効果による負の磁気抵抗効果およびスピン分裂効果による正の磁気抵抗効果を観測した。特に、p-型(Ga,Fe)Sb/n-型(In,Fe)Asの接合では、500%を超える巨大な磁気抵抗効果が実現できた。本研究では、半導体の最も基本的なデバイスであるp-n接合において、巨大な磁気抵抗効果を実現することで、今後の半導体デバイスにおけるスピン機能の導入が期待できる。
PASPS-26で発表
D2の白倉君がPASPS-26で下記の発表を行いました。
論文掲載:磁気熱電効果を取り入れたスピン軌道トルクの精密な測定手法の開発に成功
博士課程の白倉君の磁気熱電効果を取り入れたスピン軌道トルクの精密な測定手法の提案と実証に関する研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。また、優れた論文に贈られるEditor’sPickに選出されました。
今回の研究では、様々な磁気熱電効果を取り入れることでスピン軌道トルクを正確に評価できる方法を開発しました。スピン軌道トルクはスピンホール効果を用いて、磁性体の磁化反転を行う方法です。スピン軌道トルクは従来の方法よりも低消費電力で磁化を制御可能であるため、次世代不揮発メモリの一種である磁気抵抗メモリやマイク口波発振器など、様々なスピントロニクスデバイスヘの応用が期待されています。
低消費電力なデバイスを開発するためにはスピン軌道材料のスピン軌道トルクを正確に評価することが重要ですが、スピン軌道トルクの評価によく使用されている二次高調波法は測定時に発生した様々な磁気熱電効果の影響を受けるという欠点があり、この事実もあまり知られていませんでした。
今回の研究では理論的及び実験的にこの欠点を指摘し、磁気熱電効果を含むより一般化された角度分解二次高調波法を開発することで、より高精度なスピン軌道トルクの評価を可能にしました。本研究により、スピン軌道トルクを用いたデバイス開発及びスピン軌道材料開発が加速されることが期待されます。
Nature Communicationsに論文掲載:米国UCLA大学との共同研究成果
米国UCLA大学との共同研究成果がNature Commnucations誌に掲載されました。
本研究では、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積したスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)素子の作製と、比較的高いトンネル磁気抵抗効果による読み出しおよびトポロジカル絶縁体による低電流密度の書き込みの実証に成功した。
SOT-MRAMは、スピンホール効果による純スピン流を用いて、高速で書き込みができる次世代の不揮発メモリ技術である。書き込み電流と電力を下げるためには、スピンホール効果が強いトポロジカル絶縁体を用いることが有望であるが、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合との集積技術はこれまで確立されていなかった。今回の研究では、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積できることを示し、読み出しと書き込みの原理動作の実証に成功した。本研究成果により、産業界を巻き込んだ超低消費電力SOT-MRAMの研究開発が加速されると期待できる。
図1(a)トポロジカル絶縁体とCoFeB/MgO/CoFeB磁気トンネル接合(MTJ)をを集積した3端子SOT-MRAM素子の模型と(b)実際の素子の写真。(c)スパッタリング法のみで作製したBiSb-MTJ素子におけるトンネル磁気抵抗効果。(d)スピン軌道トルクによる書き込みの実証。
プレスリリース:トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積した次世代不揮発性メモリー SOT-MRAMの実証に成功~超低消費電力SOT-MRAMの実用化へ加速~
論文掲載:米国Western Digital社との共同研究成果
米国Western Digital社との共同研究成果がIEEE Transactions on Magnetics (Early Access)に掲載されました。
今回の成果では、BiSbと磁性体界面にRuを挿入することで、スピンホール効果によるスピン注入効率が向上したことを報告しています。
2021年度秋季応用物理学会発表:サムスン日本研究所との共同研究成果等6件
2021年度秋季応用物理学会でD3のTuo Fan君、D2の市村君(NHK放送技術研究所との共同研究)、M2の佐々木君(サムスン日本研究所との共同研究)、共同研究者のLe Duc Anh氏、Shobhit Goel氏、小林氏(東京大学との共同研究)が下記の発表を行いました。
[12p-S302-6] Low power spin-orbit torque magnetization switching in all-sputtered BiSb topological insulator / perpendicularly magnetized CoPt / MgO multilayers on Si substrate
Fan Tuo、Nguyen Huynh Duy Khang、Pham Nam Hai
[12p-S302-5] BiSbトポロジカル絶縁体のスピンホール効果のSb組成比依存性
市村 雅貴、Nguyen Huynh Duy Khang、高橋 真央、宮本 泰敬、ファム ナムハイ
[11a-S302-8] Highly efficient spin current source using BiSb topological insulator / NiO bilayers
Julian Sasaki、Shigeki Takahashi、Yoshiyuki Hirayama、Pham NamHai
[12p-S302-13] Spin dependent transport characteristics in full ferromagnetic (In,Fe)Sb/(Ga,Fe)Sb p-n junctions
Tu Thanh Nguyen、Nam Hai Pham、Duc Anh Le、Masaaki Tanaka
[12p-S302-12] Room-temperature spin injection and spin-to-charge conversion in a ferromagnetic semiconductor / topological insulator heterostructure
Shobhit Goel、Nguyen Huynh Duy Khang、Le Duc Anh、Pham Nam Hai、Masaaki Tanaka
[13p-S302-1] Two-dimensional Electronic State in a Ferromagnetic L10 MnGa Thin Film with Perpendicular Magnetization
MASAKI KOBAYASHI、N. H. D. Khang、Takahito Takeda、Kohsei Araki、Ryo Okano、Masahiro Suzuki、Kenta Kuroda、Koichiro Yaji、Katsuaki Sugawara、Seigo Souma、Kosuke Nakayama、Miho Kitamura、Koji Horiba、Atsushi Fujimori、Takafumi Sato、Shik Shin、Masaaki Tanaka、Pham Nam Hai
論文掲載:Si基板上のトポロジカル絶縁体による超低電流磁化反転に成功
Si基板上のトポロジカル絶縁体BiSbによる超低電流磁化反転に成功した研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。
トポロジカル絶縁体は高いスピンホール効果を示し、次世代SOT-MRAMのスピン流源として注目されていますが、今までは主にIII-V族半導体やサファイア基板など、単結晶基板の上にエピタキシャル製膜したBiSb膜しか性能評価されませんでした。今回にデバイス応用に適する酸化Si基板の上にスパッタリング法で製膜したMgO (10nm) / Pt(0.8nm) / Co(0.6nm) / Pt(0.8nm) / BiSb (10nm)構造において、比較的に高いスピンホール角(2.4)と電気伝導率(1.0 x 105 Ohm-1m-1)のBiSb膜を用いて、高い垂直磁気異方性(4.5 kOe)の磁性膜の磁化反転に成功しました。本成果はBiSbトポロジ絶縁体が実用的なスピン流材料であることを実証しました。
Western Digital社との共同研究成果を国際学会TMRC2021で発表
研究室の新メンバー
研究室へ新M1の遠藤君、トラン君、 Huy君(9月入学)、新B4の長田君、南波君が配属しました。皆さんの活躍を期待します。