論文掲載
新しい鉄系強磁性半導体(Ga,Fe)Sbの作製に関する論文がApplied Physics Letters誌に掲載されました。
本研究ではGaSbの半導体に最大13.7%のFeを低温分子線エピー法を用いて結晶成長を行い、真性p型強磁性半導体であることを確認しました。今回のp型鉄系強磁性半導体の実現によって、Pham准教授が提言した鉄系強磁性半導体の優越性(n型およびp型が作製可能)を実証した研究成果になります。また、(Ga,Fe)Sbのキュリー温度はすでに140 Kに達し、ナローギャップ強磁性半導体中にもっとも高いキュリー温度を実現しました。(参考:(In,Mn)Asが最大90K, (Ga,Mn)Sbが最大 25 K程度)。
N. T. Tu, P. N. Hai, L. D. Anh, M. Tanaka, “(Ga,Fe)Sb: A p-type ferromagnetic semiconductor”,
Appl. Phys. Lett. 105, 132402 (2014)
(a) 様々なFe濃度における(Ga,Fe)Sbの磁気円二色性(MCD)スペクトル。Fe濃度の増大につれて、GaSbの光学特異点におけるMCDが強くなり、(Ga,Fe)Sbのバンド構造がスピン分裂していることが分かる。(b) Fe濃度13.7%サンプルの異常ホール効果および(c)MCD強度の磁場依存性。強磁性によるヒステレシスが発現していることが分かる。このサンプルのキュリー温度が140 Kに達して、(In,Mn)Asや(Ga,Mn)Sbの最高キュリー温度よりもずっと高い。
論文掲載
MnドープしたGaAsを電極として持つ半導体トンネル接合における室温可視光電界発光に関する研究成果がJournal of Applied Physics誌に掲載されました。今回はGaAs:Be/AlGaAs/GaAs:Mnのトンネル接合において、GaAs:Be電極からバンド間トンネルを介して、AlGaAsの伝導帯に電子を注入し、AlGaAs内の高電界によって電子を加速して、GaAs:Mn中のMn原子d軌道を電気的に励起して発光させることができました。本研究成果は東京大学ナノフォト二クス研究センターの大津・八井研との共同研究の成果です。
P. N. Hai, T. Yatsui, M. Ohtsu, and M. Tanaka, “High-field electroluminescence in semiconductor tunnel junctions with a Mn-doped GaAs layer “, J. Appl. Phys. 116, 113905 (2014).
応用物理学会スピントロニクス研究会第1回英語講演奨励賞
2014年春季応用物理学会における下記発表に対して応用物理学会スピントロニクス研究会第1回英語講演奨励賞
Le Duc Anh, Pham Nam Hai, Yuichi Kasahara, Yoshihiro Iwasa, and Masaaki Tanaka, “Electrical control of ferromagnetism in n-type ferromagnetic semiconductor (In,Fe)As quantum wells“, 第61回春季応用物理学会学術講演会, 19p-E7-14, 青山学院大学, 2014年3月17-20日。
本研究で開発した世界唯一のn型電子誘起強磁性半導体(In,Fe)Asの量子井戸をチャンネルとして持つ電界効果トランジスタ構造において、量子化された電子状態の波動関数とFeスピンの重なり具合をゲート電圧で電気的に制御し、強磁性転移温度を効率よく変調したことに成功しました。本研究の「波動関数制御による強磁性変調」という手法は約10年前に理論的に予測されましたが、我々の研究までにはどこにも実現できませんでした。本研究の成果によって、従来の強磁性変調実験に必要なキャリア面密度の変化量1013 ~ 1014 cm-2から1011 cm-2程度に下げることができ、超高速かつ超低消費電力(4~6桁削減)の磁化スイッチング技術として期待できます。
国際学会MBE2014で学会発表
Pham准教授が米国アリゾナ州フラッグスタッフで開催される分子線エピタキシャル技術の国際学会MBE2014で下記の発表を行います。
TuC1-3 “Room-temperature Visible-light Electroluminescence in Light Emitting Diodes with an Epitaxial Mn-doped Si Layer”
P.N. Hai, D. Maruo, L.D. Anh, M. Tanaka
国際学会IUMRS-ICA2014で招待講演
Pham准教授が福岡で開催される国際学会IUMRS-ICA2014で下記の招待講演を行います。
(Invited) C1-I27-005 Aug. 27 10:30-10:55 Pham HAI
“Electron-induced ferromagnetism in Fe-doped narrow-gap semiconductors”
Appl. Phys. Rev. 誌の招待論文がもっとも読まれた論文トップ5に入った
新しく創立したAppl. Phys. Rev. 誌に掲載した下記の招待論文が2014年1月~8月現在のもっとも読まれた論文のトップ5に入りました。
Recent Progress in III-V based ferromagnetic semiconductors: Band structure, Fermi level, and tunneling transport
M. Tanaka, S. Ohya, P. N. Hai
国際学会PASPS VIIIで学会発表
Pham准教授がワシントンDCで開催されている国際学会8th International Conference on Physics and Applications of Spin Phenomena in Solids (PASPS VIII)で発表を行う予定です。
Pham Nam Hai, Daisuke Sasaki, Le Duc Anh, Masaaki Tanaka, “Interplay between strain, quantum confinement, and ferromagnetism in strained (In,Fe)As thin films”
論文掲載
強磁性半導体(In,Fe)Asの磁化特性をXMCDを使って測定した研究成果がAppl. Phys. Lett.誌に掲載されました。本研究は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の小林 正起博士が中心に行った共同研究の成果です。XMCDは基板の反磁性成分を拾えず、Fe従来の信号を選択的に測定できるため、Fe原子の磁性状態を調べるのに最適な方法です。今回の研究では、Fe原子のd軌道とAsのp軌道の混成があることを明らかにした。また、スピンと軌道成分の磁気モーメントの比がFe金属と異なることも明らかにした。さらに、(In,Fe)As内には強磁性領域と常磁性領域が共存することを明らかにし、Pham准教授が提案したdiscrete ferromagnetic domain モデルを支持した結果になる。また、(In,Fe)Asの磁化特性を改善させるためには、より均一にドナーを導入するする必要があることが分かりました。
M. Kobayashi, L. D. Anh, P. N. Hai, Y. Takeda, S. Sakamoto, T. Kadono, T. Okane, Y. Saitoh, H. Yamagami, Y. Harada, M. Oshima, M. Tanaka and A. Fujimori, “Spin and orbital magnetic moments of Fe in the n-type ferromagnetic semiconductor (In,Fe)As”, Appl. Phys. Lett. 105, 032403 (2014).
GM冷凍機の搬入完了
低温で磁気電気伝導の評価に必要なGM冷凍機の搬入が完了しました。GM冷凍機は冷やすには時間がかかる難点ありますが、ボタンひとつ押すだけで試料を6Kに冷やしてくれる便利な実験装置です。