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Category Archives: 論文

論文掲載:n型強磁性半導体(In,Fe)Asの光電子分光

東京大学と他の国際機関との共同研究で、n型強磁性半導体(In,Fe)Asの光電子分光に関する研究成果がPhysical Review B誌に掲載されました。

Masaki Kobayashi, Le Duc Anh, Jan Minár, Walayat Khan, Stephan Borek, Pham Nam Hai, Yoshihisa Harada, Thorsten Schmitt, Masaharu Oshima, Atsushi Fujimori, Masaaki Tanaka, Vladimir N. Strocov, “Minority-spin impurity band in n-type (In,Fe)As: A materials perspective for ferromagnetic semiconductors”, Phys. Rev. B 103, 115111 (2021).

本研究により、n型強磁性半導体(In,Fe)Asのバンド構造を明らかにしました。特に電子が予測通りに伝導帯に滞在し、またバンドギャップ中にFeの不純物バンドも観測されました。

論文掲載:面内磁化反転の新しい検出方法の提案と実証

スピン軌道トルクを用いた面内磁化反転の新しい検出方法の提案と実証に関する研究成果がApplied Physics Letters誌に掲載されました。
Nguyen Huynh Duy Khang, Pham Nam Hai, “Spin–orbit torque as a method for field-free detection of in-plane magnetization switching”, Appl. Phys. Lett. 117, 252402 (2020).

垂直磁化の単膜磁性体の磁化反転の検出は異常ホール効果が用いられています。しかし、面内磁化膜の場合、反転の検出方法がありませんでした。そこで、磁化反転の後に、面内に磁場を印加して、プレナーホール効果を測定する方法がありますが、磁場印加が必要でした(米国ウェステンデジタル社が提案した方法)。本研究では、面内磁化反転の後に、スピン軌道トルクを用いて、磁化を少し傾けることで、外部磁場印加をしなくても、磁化反転を検出できる方法を提案し、実際に磁化反転の検出を実証しました。本方法は磁気抵抗メモリや磁壁駆動磁性細線メモリの研究開発に応用できると期待できます。

論文掲載:強磁性半導体の磁化機構の解明

日本原子力研究開発機構、東京大学、京都産業大学との共同研究で、強磁性半導体物質GaMnAsの磁化機構を解明した研究成果がJournal of Applied Physics誌の注文論文として掲載されました。

Yukiharu Takeda, Shinobu Ohya, Pham Nam Hai, Masaki Kobayashi, Yuji Saitoh, Hiroshi Yamagami, Masaaki Tanaka, and Atsushi Fujimori, “Direct observation of the magnetic ordering process in the ferromagnetic semiconductor Ga1-xMnxAs via soft x-ray magnetic circular dichroism”, Journal of Applied Physics 128, 213902 (2020).

GaMnAsは最初に合成された強磁性半導体でありながら、その磁化機構が長い間に論争になっています。特に、磁化が空間的に均一としたZener p-d交換モデルが信じられてきました。今回の研究では、X線磁気円二色法を用いて、高温から温度を下げながら、磁化過程を測定しました。その結果、キュリー温度以上の高い温度領域から局所的に超常磁性領域が出現し、キュリー温度温度以下でグローバルな磁化が出現したという非均一な磁化過程を明らかにした。従って、GaMnAs中のMn原子が均一に分布しても、磁化が決して均一ではないことが分かります。

レビュー論文掲載

トポロジカル絶縁体におけるスピンホール効果のレビュー論文がJournal of the Magnetics Society of Japanに掲載されました。

Pham Nam Hai, “Spin Hall Effect in Topological Insulators”, J. Magn. Soc. Jpn. 44, 137-144 (2020).

論文掲載:Si基板上のトポロジカル絶縁体による超低消費電力磁化反転の実証

Si基板上に製膜したトポロジカル絶縁体BiSbによる超低消費電力スピン軌道トルク磁化反転の実証に関する研究成果がScientific Reports誌に掲載されました。

Nguyen Huynh Duy Khang, Soichiro Nakano, Takanori Shirokura, Yasuyoshi Miyamoto & Pham Nam Hai, “Ultralow power spin–orbit torque magnetization switching induced by a non-epitaxial topological insulator on Si substrates”, Scientific Reports 10, 12185 (2020). 

BiSbトポロジカル絶縁体は当研究室が開発した世界最高性能のスピン注入源であり、次世代の不揮発性メモリと期待されているスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)の実現に大変有望な材料ですが、III-V族半導体基板上に成長しないと単結晶ができないという問題がありました。そこで、本研究では、Si基板上に、製膜したBiSbの性能評価を行いました。その結果、Si基板上のBiSbは単結晶でなくても、従来の重金属や他のトポロジカル絶縁体より1桁~2桁高いスピンホール角を確認でき、さらにCoTbフェリ磁性体を0.07 MA/cm2という世界最小の電流密度で磁化反転の実証に成功しました。さらに、10 nsというDRAM並みの高速書き込みにも成功しました。

論文掲載:(In,Fe)Asの室温強磁性の達成

GaAsオフ基板上に(In,Fe)Asを結晶成長させ、オフ基板表面の原子ステップにFeが集まりやすい現象を利用して、室温強磁性を達成した研究成果はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。

Pham Nam Hai, Munehiko Yoshida, Akihide Nagamine and Masaaki Tanaka, “Inhomogeneity-induced high temperature ferromagnetism in n-type ferromagnetic semiconductor (In,Fe)As grown on vicinal GaAs substrates”, Jpn. J. Appl. Phys. 59 063002 (2020).

本研究によって、Pham准教授が提言してきたすべての鉄系強磁性半導体, (In,Fe)As, (Ga,Fe)Sb, (In,Fe)Sbの室温強磁性を達成しました。

論文掲載:高品質なトポロジカル絶縁体のスパッターリング成膜に成功

次世代のスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)の純スピン流源として有効なBiSbトポロジカル絶縁体のスパッターリング成膜に成功した研究成果はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。

Tuo Fan, Mustafa Tobah, Takanori Shirokura, Nguyen Huynh Duy Khang, and Pham Nam Hai. “Crystal growth and characterization of topological insulator BiSb thin films by sputtering deposition on sapphire substrates”, Jpn. J. Appl. Phys. 59, 063001 (2020).

トポロジカル絶縁体の表面にはDirac電子のような分散を持つ状態があり、そこから極めて高い効率でスピン流を生成できることは近年に分かった。特に、当研究室が発見したBiSbトポロジカル絶縁のスピンホール効果は他の材料を凌駕した性能を示しています。しかしながら、トポロジカル絶縁体は一般的に分子線エピタキシャル結晶成長法(MBE法)で成膜されています。このMBE法は高い結晶性のトポロジカル絶縁体を成膜できますが、量産性が悪くて実際にSOT-MRAMの製造プロセスに使われていません。そこで、本研究で量産性が良いスパッターリング法でBiSbを成膜し、高い電気伝導率と金属的な表面状態を確認しました。これにより、BiSbをSOT-MRAMの製造プロセスに導入できることを実証しました。


図:スパッターリング法を用いて成膜したBiSbの格子像

 

論文掲載:バイアス磁場不要の超低電流スピンホール型マイクロ波発振器

バイアス磁場不要の超低電流スピンホール型マイクロ波発振器に関する研究成果がJournal of Applied Physics誌に掲載されました。

Takanori Shirokura, Pham Nam Hai, “Bias-field-free spin Hall nano-oscillators with an out-of-plane precession mode”, J. Appl. Phys. 127, 103904 (2020).

スピントルクを用いるマイクロ波発振器はサイズが数10nmと極めて小さく、人工知能やマイクロ波アシスト磁気記録に欠かせないデバイスです。しかし、従来のスピン偏極電流を用いたマイクロ波発振器(Spin torque nano oscillator; STNO)は駆動電流が大きく、信頼性に問題がありました。一方、スピンホール効果によるスピン軌道トルクを用いると、駆動電流が一桁以上小さく抑えることができると知られています。しかし、スピンホール型マイクロ波発振器は発振には磁場印加が必要でした。そこで、本研究では、バイアス磁場の印加無しで発振可能な新しいスピンホール型マイクロ波発振器(Spin Hall nano oscillator; SHNO)を提案しました。これにより、磁場印加が不要かつ超定電流駆動できる信頼性が高いマイクロ波発振器が実現できます。

図(a)磁化を面直方向に歳差運動させることによって、バイアス磁場の印加が必要なくなることを発見。(b) STNOよりも極めて少ない電流で駆動可能。特にスピンホール効果が強いトポロジカル絶縁体を用いると、nAで駆動可能である。

論文掲載:世界最高値のスピンバルブ比12%を達成

MnGa垂直磁化膜と半導体GaAsからなる横型スピンバルブ構造において、世界最高の12%のスピンバルブ比と33mVのスピン依存出力電圧を達成した研究成果はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載されました。
Koki Chonan, Nguyen Huynh Duy Khang, Masaaki Tanaka, and Pham Nam Hai, “Large magnetoresistance and spin-dependent output voltage in a lateral MnGa/GaAs/MnGa spin-valve device”, Jpn. J. Appl. Phys. 59, SGGI08 (2020).

今回は分子線エピタキシャル結晶成長法を用いて、良好なMnGa/GaAs界面を作製ができました。さらに、電子ビームリソグラフィーとイオンミーリン法による600 nmという短いGaAsチャネルを持つナノスケールのMnGa/GaAs/MnGaの横型スピンバルブ構造を作製しました。その結果、世界最高の性能を達成できました。

注目論文掲載:巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果

巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果に関する研究成果は米物理協会の雑誌Journal of Applied Physicsに注目論文として掲載されました。

Nguyen Huynh Duy Khang and Pham Nam Hai, “Giant unidirectional spin Hall magnetoresistance in topological insulator – ferromagnetic semiconductor heterostructures”, Journal of Applied Physics 126, 233903 (2019).

一方向性スピンホール磁気抵抗効果は非磁性体・磁性体の接合において、非磁性体のスピンホール効果によって、接合抵抗が磁性体の180°磁化反転に応じて変化する現象である。この現象を利用すれば、2層だけの極めて簡易な構造の面内型スピン軌道トルク磁気抵抗メモリーの実現が期待できる。しかし、従来研究されてきた重金属・磁性金属の接合においては接合の抵抗変化が0.001 %台と極めて微小であるため、デバイス応用に必要な1%以上の抵抗変化の実現が難しいと考えられてきた。

今回の研究では、スピンホール効果が強いトポロジカル絶縁体と強磁性半導体を組み合わせたことで、従来の3桁高い1.1 %の巨大な抵抗変化を達成した。さらに巨大な一方向性磁気抵抗効果の起源が強磁性半導体中のマグノン励起・吸収とスピン無秩序散乱によって生じることを明らかにした。

プレスリリス:巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果を実証-従来の3桁高い1.1%の巨大な抵抗変化を達成-

Press release: Paving the way for spintronic RAMs: A deeper look into a powerful spin phenomenon